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画像軽量化コストの妥当性「いくらまで適切?」を考える

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Webサイトの画像軽量化には、オープンソースによる内製から、さまざまな外部のサービスの活用まで多くの選択肢がある。

外部サービスはもちろんのこと、内製するにしても工数がかかり、費用は発生する。しかしこれまで画像軽量化の費用の妥当性についてはほとんど見聞きしたことがない。

サービスの料金表や、出された見積もりについてそれが妥当なのか、それとも払い過ぎなのか、画像軽量化サービスを提供する企業として費用対効果を真剣に考えてみた。

画像軽量化を検討する方にぜひ参考いただきたい。


何のために画像を軽量化するのか

Web画像は軽いに越したことはないが、コストをかけてまで画像を軽量化するのは果たして何のためか?

弊社では以下の4つの価値を想定している。

  1. 海外クラウドコストの削減
  2. 表示スピードの改善
  3. 社会的責務(CSR)
  4. チーム内の摩擦解消

それぞれの観点でコストの妥当性を考えてみよう。

1. 海外クラウドコストの削減

はじめに言うと、月間数百万以上のPVがあるサイトをAWSなど海外クラウドプラットフォームで提供している場合は、画像軽量化は今すぐ検討いただきたいテーマである。

言うまでもなく、AWSをはじめとした海外クラウドプラットフォームの利用が増えている。IT分野における慢性的な貿易収支悪化は、「デジタル赤字」とも呼ばれ社会問題にも発展している。

海外のサーバーホスティングやクラウドプラットフォームのほとんどはサーバー利用料に加え、ユーザーへのデータ送信量に応じても従量課金が発生する料金体系になっている。多くのユーザーに大きなデータを送信(配信)すると、それだけたくさんの費用を請求されるのだが、これが案外バカにならない。

そして送信データのうち、最も大きいのが画像データである。したがって画像データを軽量化すると効果的にその費用を削減できる。

弊社の事例の中からコスト削減が顕著なケースを紹介しよう。

  • ケース1 月間約1000万PVの通販サイト
    • 以前のAWSのデータ送信料金: 月額約100万円
    • 画像軽量化により: -35万円削減
    • 画像軽量化コスト: 月額12万円 (年間276万円お得)
  • ケース2 ライフスタイル誌メディアサイト
    • 以前のAWSのデータ送信料金: 月額150万円
    • 画像軽量化により: -100万円削減
    • 画像軽量化コスト: 月額12万円 (年間1,056万円お得)

上記のケースでは、AWS CloudFrontの画像データを次世代画像フォーマットWebPに自動変換するサービス「LightFile Proxy」を利用いただいている。

このように海外クラウドプラットフォームを利用する人気サイトでは、画像軽量化の価値は語るまでもない。使った月からトータルコストでお釣りがくる。そして導入が早い方が将来的に得られる総額が大きく、遅れるほど無駄な損失が膨らむ。

画像軽量化コストの妥当性 ① 海外クラウドのコスト削減

海外クラウドプラットフォームを利用しているなら、通信コストの削減見込みが画像軽量化サービスの妥当なコストである。

2. 表示スピードの改善

画像軽量化というと表示スピードの改善を期待する声が最も多いが、これだけインターネットが高速なった現在、画像軽量化くらいで表示スピードの目覚ましい改善を期待するのはあまりに無理がある。

それでも自社サイトの表示が遅いと感じている方は多い。原因は画像ではなく十中八九、JavaScriptとサードパーティタグであるのだsが、このテーマは本記事からかけ離れるのでまた別の機会に論じたい。

しかし画像軽量化は無意味ではない。どんなサイトにおいても、通信が遅い体験を強いられるユーザーが必ずいる。画像軽量化はそんな不運なユーザーの助けになる。

仮説: 画像軽量化は通販サイトの収益を1〜2%改善する

例えば通販サイトで画像データを半分に削減できると、非常に感覚的な数値ではあるが、1〜2%くらいは収益増に貢献するのではないかと感じている。

実際のデータを見てもページ読み込み時間は離脱への影響が大きく、画像軽量化の効果が0%ということはない。

しかし5%改善するかというと、それは高望みがすぎる。

そこでフェルミ推定的であり根拠は乏しいが、議論を前進させるため悲観シナリオ +1%、楽観シナリオ +2%と想定してみた次第だ。

上記の仮説に基づくと、画像軽量化サービスの月額が粗利(売上-仕入れなどの限界費用)の1〜2%以内であれば利益を毀損しない。

例えば弊社の画像軽量化サービスは月額3万円程度からの提供になる。月次の粗利が150万円〜300万円以上のサイトであれば使う方が得という推論になる。

画像軽量化コストの妥当性 ② 表示スピード改善

通販サイトであれば粗利の1〜2%までを妥当なコストとして仮定してみる。

3. 社会的責務(CSR)

海外クラウドのコスト削減と表裏の観点であるが、エンドユーザーもモバイル通信においては従量課金を強いられている。Webサイトを閲覧してくれた人は、自身の毎月限られた「ギガ」を消費しているかもしれない。

環境的な意味もある。データ通信は安価ではあるがタダではない。データ量が多いのはそれだけ消費電力と環境負荷も増す。

これらを考慮すると、重いデータに無頓着なのは社会的無責任であり、費用対効果は度外視しても効率のよいデータ配信に投資するのは、CSR(企業の社会的責任)の一環と言えるだろう。事業に影響がない範囲でそれを背負う意義はある。

画像軽量化コストの妥当性 ③ 社会的責務(CSR)

インターネットでビジネスを行う企業として、ユーザーと環境に配慮するCSRとしての出費と考える。

4. チーム内の摩擦解消

制作現場では画像データの軽量化はWebデザイナーの責任とされることが多い。技能的、作業フロー的にもふさわしいので仕方がないところはある。

しかしただでさえ忙しいWebデザイナーが画像の軽量化まで時間を割いている余裕はない。一方、ディレクターやWebマスターは少しでも画像を軽くしてほしいと期待する。ここにチーム内の摩擦が生じる。

プログラムが生成するサムネイル画像などの軽量化は、エンジニアが責任を背負うことになるが、ここにも同様に軽くしてほしい圧力と、簡単に言わないでほしいという摩擦が生まれる。

そもそも画像軽量化はサイト運用の本質的な作業ではない。そこで外部サービスに委託してしまえば、これらのストレスはまとめてキャンセルできる。

画像軽量化コストの妥当性 ④ 本質的ではない業務による摩擦の解消

サイト運用チームの運営を円滑に進める外注費として考える。

画像軽量化の妥当なコストをどう判断するか

以上、画像軽量化が果たして投資に見合うのかを4つの価値の観点から考えてみた。

もっとも強力な理由は海外クラウドのコスト削減だ。これだけで理由に足るサイトは多いだろう。

どれかひとつを選択するのではなく、組み合わせにより画像軽量化を実施する意味とコストの妥当性を考えていただきたい。

海外クラウドではなく売上もまだそこまで大きくないケースでも、CSRあるいはチーム内のストレスを避ける効果も考慮すると、提示された画像軽量化のコストは高くないと判断できるかもしれない。