PageSpeed InsightsのCrUXはどこまで信じてよい? モバイルは的中、デスクトップは実測46%遅かった

PageSpeed InsightsやSearch ConsoleのCrUXは、Chromeのオプトインユーザーだけを集めたRUMだ。全ブラウザ・全PVを記録する自前RUMと通販14サイトで突き合わせると、順位はよく一致する一方、モバイルはほぼ的中、デスクトップは実測より46%も遅いことがわかった。

writer K. Miyanagadate 2026.07.20 (Mon)read 5分cat サイトスピード改善, 研究, 技術解説

PageSpeed InsightsやSearch Consoleを開くと、「実際のユーザーの環境で評価する」というフィールドデータが目に入る。競合サイトのURLを打ち込めば、他社の速度まで外から覗けてしまう。この便利な数字の正体が CrUX(Chrome UX Report) だ。

ただし、CrUXは万能の実測値ではない。Chromeユーザーの、しかもオプトインした人だけを集めた、いわば限定版のRUM(実ユーザー計測)である。では、その数字を見て「このサイトは速い」「あの競合は遅い」と語るとき、それはどこまで信じてよいのだろうか。

弊社は全ブラウザ・全PVを取りこぼさず記録する自前のRUM「Speed is Money」を運用している。そこで、同じ14の通販サイトについて CrUXと自前RUMを一つずつ突き合わせ、CrUXがどこで当たり、どこで外れるのかを確かめてみた。


CrUXは「Chrome限定のオプトインRUM」である

まず両者が何を測っているのかを整理しておく。同じ「実際のユーザーの速度」でも、母集団がまるで違う。

CrUXSpeed is Money(自前RUM)
対象ブラウザChromeのみ(iOSのChromeも対象外)全ブラウザ
対象ユーザーオプトインした人だけ全訪問者
収録の条件十分なトラフィックのあるオリジン単位条件なし(全PV)
集計28日窓・p75・丸めありミリ秒精度の生ログ

CrUXは「十分な人数のChromeユーザーが訪れたサイト」でなければそもそもデータが生成されない。裏を返せば、Chromeユーザーが少ないサイトや小規模サイトは丸ごと欠測する。実際、弊社のコーポレートサイト www.ideamans.com はCrUXでは「No CrUX data」、つまり母数不足で一件も出てこない。

「CrUXに無い=遅い」ではない

CrUXにデータが無いのは、遅いからではなく訪問者数がしきい値に届いていないからだ。中小サイトほど欠測しやすい。「PageSpeed Insightsにフィールドデータが出ない」ことを不安に思う必要はない。

今回突き合わせたのは、Speed is Moneyを利用中の大手通販14サイト(匿名でSite A〜N)だ。スナップショット期間の総PVは 1,058万。この14サイトは幸い全社がCrUXにも収録されていたので、一件ずつ数字を並べて比較できる。

なお、CLS(レイアウトのずれ)は両者で測定方式が違いすぎるため、今回の定量比較からは外している。

まず「順位」はよく当たる

最初に、CrUXとRUMのLCP(最大コンテンツの表示時間)を14サイト分プロットしてみよう。横軸がCrUX、縦軸が自前RUMだ。

14サイトのLCP p75をCrUX(横軸)と自前RUM(縦軸)でプロットした散布図。点はおおむね右肩上がりに並ぶが、y=xの基準線より上に偏っており、RUMのほうが遅い傾向を示す

点が右肩上がりに並んでいる。速いサイトはCrUXとRUMのどちらでも速く、遅いサイトはどちらも遅い。順位の一致度を数値で見ると、実際かなり高い。

  • LCP:Spearman順位相関 0.956
  • FCP:0.960
  • TTFB:0.930
  • INP:0.874

つまり「競合A社と比べてうちは速いのか、遅いのか」という相対的な順位付けに、CrUXは十分信頼できる。外から競合の速度を眺めて優劣を判断する使い方は、理にかなっている。

ところが、よく見ると点は基準線(y=x、完全一致の線)より上に偏っている。これは自前RUMのほうが遅く出ているということだ。全体で見ると、RUMのLCPはCrUXより中央値で 27.4%も遅い。順位は合うのに、絶対値はズレる。この差はどこから来るのか。

ズレの正体は「デバイス」にあった

同じ数字をモバイルとデスクトップに分けて、RUM÷CrUXの比(1.0なら完全一致)を指標ごとに並べたのが次の図だ。

LCP・INP・TTFB・FCPそれぞれについて、モバイルとデスクトップのRUM÷CrUX比を棒グラフで比較した図。モバイルはどの指標も1.0付近に収まるが、デスクトップはLCPをはじめ大きく1.0を超えて上振れしている

一目瞭然だ。モバイルはどの指標もほぼ1.0。実際、モバイルのLCPはCrUXと自前RUMの差がわずか +1.6%、相関も r=0.985 とほぼ完全に一致する。CrUXのモバイルの数字は、そのまま信じてよい精度なのだ。

ところがデスクトップは大きく上振れする。デスクトップのLCPは自前RUMのほうが 45.8%も遅く、相関も r=0.640 まで落ちる。CrUXのデスクトップは、実際よりずっと楽観的な数字を出している。

なぜデスクトップだけこんなにズレるのか。理由は、自前RUMのデスクトップには CrUXが構造的に拾わない層が混ざっているからだ。非ChromeのSafariやEdge、シークレットモードやオプトアウトしたユーザー、社内・法人回線、監視や自動化のトラフィック——これらは概して遅く、そしてCrUXの網には入らない。CrUXはChromeの、いわば「行儀のよい」ユーザーだけを見ている。

この乖離が極端に出たのがSite Jだ。全体のLCPで見ると、自前RUMはCrUXより 114.7%(2倍以上)遅い。分解すると理由がはっきりする。

  • モバイル:RUM 1,796ms vs CrUX 1,802ms(ほぼ一致
  • デスクトップ:RUM 6,208ms vs CrUX 1,653ms(3.8倍の開き

デスクトップに重い体験を強いられている層がいるのに、CrUXはそれを丸ごと見落としている。モバイルだけ見て「速いサイトだ」と判断すると、実態を大きく取り違える典型例である。

CrUXの「全体」は実はモバイルの速度だった

ここで新たな疑問が湧く。デスクトップがそれほど遅いなら、なぜCrUXの「全体(all)」の数字はそこまで悪くならないのか。答えは構成比にある。

14サイトそれぞれについて、CrUXで計測された体験のモバイル比率と、自前RUMで捉えた実来訪のモバイル比率を並べた棒グラフ。CrUXのモバイル比率はどのサイトも高く、実来訪のモバイル比率を大きく上回っている

CrUXで計測される体験のモバイル比率は、14サイト平均で 83.6%。ところが、自前RUMで捉えた実際の来訪のモバイル比率は平均39.3%しかない。これらの通販・アパレル系サイトは、むしろデスクトップからの来訪が主体なのだ。

なぜこれほど食い違うのか。CrUXが見ているのは「Chromeのオプトインユーザー」であり、それはスマートフォンに偏っている。一方、パソコンからじっくり商品を選ぶ層や、非Chromeのユーザーは、CrUXからこぼれ落ちる。

結果として、CrUXの「全体」の数字は、実質的にモバイルChromeの速度を見ているに等しい。実来訪の代表値として読むと、デスクトップ主体のサイトでは実態と大きくズレる。「PageSpeed Insightsの全体スコアが良好だから安心」とは、必ずしも言えないのだ。

指標によってクセが違う

LCPやFCPはCrUXが楽観的(実測のほうが遅い)だが、指標を変えると傾向も変わる。

LCP・INP・TTFB・FCPそれぞれについて、Good・Needs improvement・Poorの構成比を自前RUMとCrUXで積み上げ棒グラフにして並べた図。LCPとFCPではCrUXのGood比率が実測より多めに出ている
  • TTFB(サーバー応答時間)はほぼ無バイアス(差 -0.7%)。サーバーの応答速度はどのブラウザで測っても変わらないので、母集団の違いに左右されにくい。CrUXのTTFBは素直に信じてよい。
  • INPは逆にCrUXのほうが悪めに出る。自前RUMのほうが 22.1%小さい(速い)。操作の反応性は、CrUXがやや厳しめに評価する傾向がある。
  • Good率(良好判定の割合)では、LCPのGood率がCrUXのほうが実測より中央値で 6.6ポイント高く出る。CrUXを見ていると「良好なユーザーが多い」と楽観しがちだ。

指標ごとにこうしたクセを知っておくと、CrUXの数字の受け取り方を調整できる。

「変化のトレンド」はどこまで追えるか

CrUXには過去の履歴を追える機能もある。では、改善施策を打ったあとに「良くなった/悪くなった」という変化は、CrUXで正しく追えるのだろうか。

これもモバイルとデスクトップ、そして指標で明暗が分かれる

  • モバイルのLCP月次推移:サイト別相関の中央値 r=0.738、14サイト中13サイトが正の連動。大きな変化はちゃんと追える
  • デスクトップのLCP月次:中央値 r=0.291 で符号もバラバラ。当てにならない。
  • onload(読み込み完了)のトレンド:モバイルでも中央値 r=0.057 と、ほとんど連動しない。

デスクトップやonloadの微細な変動が追えない一因は、丸めにある。PageSpeed Insightsが見せている月次データ(BigQueryの device_summary)では、LCPのp75は 100ミリ秒刻み、INPは 25ミリ秒刻みに丸められている。月に30〜80ミリ秒といった小さな実変動は、丸めの階段に飲み込まれて消えてしまう。

精度が欲しいならCrUX APIを使う

同じCrUXでも、リアルタイムに近いCrUX APIのp75は 1ミリ秒精度で得られる。100ミリ秒刻みなのはBigQueryの月次サマリ(=PageSpeed Insightsが表示する面)のほうだ。細かい変化を追いたいなら、丸められた面ではなくAPIを見るとよい。ただしonloadはAPIには無く、月次サマリでしか照合できない。

実務ガイド:信じてよい範囲と疑うべき範囲

ここまでの突き合わせを、そのまま実務の指針にまとめておく。

信頼してよい使い方

  • 競合との相対的な順位付け(順位相関 0.87〜0.96と高い)
  • モバイルの水準の推定(実測との差わずか1.6%)
  • 大きな変化の履歴(モバイルLCPは13/14サイトで正しく連動)
  • TTFBの水準(母集団に左右されず無バイアス)

注意が必要な使い方

  • デスクトップの絶対値(実測が46%遅い。楽観的すぎる)
  • 「全体」を実来訪の代表と読むこと(実質モバイルChromeの速度)
  • 小さな月次変動やonloadの微動(丸めで消える)
  • 中小サイトの評価(欠測しやすく、無い=遅いではない)
  • CLSの横断比較(測定方式が違いすぎる)

まとめ:CrUXは地図でRUMは実測

CrUXは、外から誰のサイトでも覗ける便利な地図だ。競合と自社の位置関係、モバイルのおおよその標高、大きな地形の変化は、十分な精度で読み取れる。

しかし地図には縮尺がある。デスクトップの細かな起伏や、実来訪の本当の内訳は、地図だけでは見えない。そこを正確に知るには、自分の足で歩く実測——全ブラウザ・全PVのRUMが要る。

CrUXを疑う必要はないし、盲信する必要もない。縮尺の違いを知って使い分ける、それがフィールドデータと正しく付き合うということなのだと思う。

自前RUMで実測するには

弊社ではサイトスピードに特化したシンプルな無料アクセス解析サービス「Speed is Money」を提供している。全ブラウザ・全訪問者の速度を取りこぼさず記録するので、CrUXでは見えないデスクトップの実態や、実来訪の本当のデバイス構成まで把握できる。

この記事のデータも、Speed is Moneyを利用中の通販サイト14サイトに協力をいただいた。CrUXの数字だけで物足りなくなった方は、ぜひ実測を試してみてほしい。

なお、速度がCVRにどう効くのかについては、「通販サイトが遅いと損失はどのくらい?」でも機会損失の見える化として詳しく扱っている。あわせて読んでいただけると幸いだ。