CrUX(Chrome User Experience Report)は、ChromeユーザーがWebサイトを閲覧したときのスピード指標を収集したビッグデータだ。このデータの素晴らしいところは、
- 事前準備なしに、思いついたときにサイトスピードの状態を確認できる
- 他のサイトも同様に確認し、競合サイトと比較できる
こういった点にある。
一方で弱点もある。Chromeユーザーの、さらにオプトインしたユーザーだけが対象であることだ。
スマホで言うと日本はiPhone利用者が多く、デスクトップもEdgeがシェアを伸ばしている。このように偏ったデータであることは否めない。
弊社では、より詳細なスピード体験を観測するため、RUM(Real User Monitoring)収集サービス「Speed is Money」を運営している。Speed is Moneyでは、iPhone SafariやEdgeといったChrome以外の有力ブラウザからも、可能な限りスピードを収集している。
この記事では、この二つのデータにどんな違いがあるかを比較してみた。
CrUXはGoogleのおかげで手軽にアクセスできる貴重なデータだが、実際のユーザー体験とどんな誤差があるのか? CrUXを見てサイトスピードに関する判断をするとき、何が正しくて、何が間違っているのか?
このような疑問に、一応の回答を示したい。
ただし、Speed is Moneyもより多くのユーザーをカバーした標本ではあるが、真実(母数)ではない。また、今回は14の通販サイトを対象に調査を行ったが、これもネット全体からすると微小なサンプルだ。
そうした限界は承知のうえで、「CrUXって、サイトスピードに関する意思決定をする上で信用できるよね?」を、実データで再確認してみたい。
そもそもCrUXは誰を見ているのか
「Chromeユーザーだけ」と言うと軽く聞こえるが、実際にどれだけの人が抜け落ちるのか。まず、そこを日本のブラウザシェアで具体的に押さえておきたい。ここが、この記事のすべての土台になる。
CrUXに体験が集計されるのは、Googleの公式メソドロジーによれば、次を満たすChromeユーザーだけだ。
対象
- デスクトップ版Chrome(Windows / macOS / ChromeOS / Linux)
- Android版Chrome
対象外(公式が明記して除外)
- iOS版のChrome
- Android アプリ内の WebView
- その他のChromium系ブラウザ(Microsoft Edge を明示)
そのうえで、利用統計レポートを有効化し、閲覧履歴を同期している(オプトインした)人だけがカウントされる。
「モバイルのChromeは全部CrUXに入る」は誤り
iPhoneではAppleの制約で、Chromeを含むすべてのブラウザがSafariと同じWebKitエンジンで動く。CrUXの計測機構はChromiumのBlinkエンジン上でしか働かないため、iOS版のChromeはまるごと対象外だ。CrUX対象のモバイルChromeは、実質「Android版Chrome」だけと考えてよい(web.dev: CrUXとRUMの違い)。
デスクトップ:CrUXが見ているのは3分の2だけ
日本のデスクトップ・ブラウザシェアに、CrUXが拾う範囲を重ねてみる。上段が各ブラウザの内訳、下段はCrUX対応(緑)と対象外(グレー)に分けたもので、横軸はいずれもシェア(%)だ。赤い破線がCrUX対応の境界を示す。

CrUXが拾うのは Chromeの65.4%だけ(StatCounter, 2026年6月)。次点の Edge(22.2%)はChromium系でも対象外で、SafariやFirefoxも当然入らない。つまりデスクトップ来訪のおよそ3分の1を、CrUXは一切見ていない。後で「デスクトップのLCPが実測と大きくズレる」ことを確かめるが、その根っこは、この見えていない3分の1にある。
モバイル:iPhoneが過半なのに丸ごと不可視
モバイルは非対称がさらに極端だ。同じく上段が各ブラウザの内訳、下段がCrUX対応の上限(Android・緑)と対象外(iOS等・グレー)で、横軸はシェア(%)である。

まず日本のモバイルOSは iOS 58.7% / Android 41.2%。iPhoneのほうが多い。そして前述のとおり iOSはSafari・Chromeともに同じWebKit=丸ごとCrUX対象外だ。グラフのChrome 55%はAndroid版とiOS版の合算で、そのうちCrUXに入るのはAndroid版だけ。Safari 40%も当然入らない。
結局、CrUXのモバイル値は「Android Chromeの体験」であって、iPhoneが過半を占める日本のモバイル実体験の代表ではない。この前提を頭の隅に置いて、以降のデータを見てほしい。
出典
ブラウザ・OSシェアはいずれも StatCounter GlobalStats(日本・2026年6月)。内訳はデスクトップ・ブラウザ/モバイル・ブラウザ/モバイルOSを参照した。CrUXの対象範囲はChrome公式のメソドロジーによる。
CrUXのデータはどんな数字でできているか
対象ブラウザを理解したところで、CrUXが保持している数字の意味も確認しておこう。
まず、ユーザーの体験スピードは、同じページであってもかなりのばらつきが生じる。端末や回線が人それぞれだからだ(このばらつきは「ページスピードは一定ではない?」で詳しく書いた)。したがって、単純に「何秒」とひとつの数字では表現できない。そこでCrUXは、体験のばらつきを次の2つの形にまとめて持つ。
- p75(75パーセンタイル) — 大多数(訪問者の75%)の体験が、何秒以内に収まっているか。たとえばLCPのp75が2.5秒なら「4人に3人は2.5秒以内に表示できていた」を意味する。
- Good(良い)/ Needs improvement(要改善)/ Poor(悪い)の比率 — 指標ごとに良い・悪いの基準線を設け、全体験が3グループに分かれる。その構成比だ。PageSpeed Insightsの緑・黄・赤の帯がこれで、LCPなら2.5秒以下ならGood(良い)、4秒超ならPoor(悪い)。
この記事で特に見るのは、次の3つの指標だ。あわせて、どちらの向きがよいかも押さえておきたい。
- p75 — 小さいほどよい
- Good(良い) — 大きいほどよい
- Poor(悪い) — 小さいほどよい
デバイスは分けて見る
CrUXは、端末を phone(スマホ)/ desktop(PC)/ tablet(タブレット) の3種類に分けて集計している。
PCはスマホより端末性能が高い。だから全体的によい数値が出やすい。両者を混在させると互いにノイズになり、データの意味が曖昧になる。したがって、デバイス別に集計するのが基本となる。
なお、タブレットはごく少数で、分析に足る母数がない。そこでSpeed is Moneyでは、タブレットをPCに含めている。本記事でも、タブレットは分析対象から外している。
データの取り出し方——CrUX APIとBigQuery
CrUXには、データの取り出し方がふたつある。
- CrUX API:直近28日のスナップショット。現在のスピードを速報として知りたいときに使う。ドメイン単位・ページ単位それぞれのデータを得られ、数値の精度も高い(1ミリ秒精度)。
- BigQuery:過去のアーカイブで、毎月中旬くらいに前月分までの集計が出揃う。ドメイン単位に集約される。
イメージとしては、売上の速報値と、月次決算で締めた確定値といったところだろうか。普段おなじみのPageSpeed InsightsやSearch Consoleに表示される数値は、CrUX APIのほうだ。
BigQueryには過去のデータが何年分も蓄積されている。特別なトラッキングなしでも、サイトスピードの長期的な推移を分析できるわけだ。BigQueryにはいくつかデータセットがある。弊社では、デバイスごとに集計された device_summary をよく使う。
BigQueryの難点は、反映の遅さと、p75の値が丸められることだ(LCPは100ミリ秒、INPは25ミリ秒刻み)。
そこで今回は、一致の精度をまず1ミリ秒精度のAPIで確かめ、そのうえで実運用で頼る月次アーカイブ(device_summary)が13か月×14サイト=182点でどれだけ実測と合うかも検証した。
用途の線引き:参考になるケース/注意が必要なケース
先に結論を、用途別に整理する。「正しい使い方」と「間違えやすい使い方」の切り分けだ。
ただし、この「正しい/間違い」という物言いには留保がいる。正確には、今回の14サイト横断調査で「その読み方を否定する材料が見つかったか、そうでなかったか」を述べているにすぎない。14サイトはネット全体からすればごく小さな標本で、真偽を証明したわけではない。それでも、数字を扱って意思決定をする以上、どこかで何らかの態度を決める必要はある。弊社としては、今回支持された仮説をひとまず採用したうえで、今後のサイトスピード改善提案に活かしていく所存だ。以下の「正しい/間違い」は、その立場からの表現だと受け取ってほしい。
参考にしてよい(CrUXが当てになる)
- ✅ 競合と自社の速度の順位付け——「A社とB社、どちらが速いか」
- ✅ モバイルの速度水準——スマホのLCPなら、CrUXの数字はほぼ実測どおり
- ✅ モバイルの「良し悪しの割合」——Good(良い)率が何割か、はモバイルなら信頼できる
- ✅ INP(操作の反応性)——これはモバイル・デスクトップを問わず当てになる
- ✅ 月々の大きな変化——例えばLCPの数百ミリ秒単位の変動。ただしp75で追うよりGood(良い)率のほうが正確
注意が必要(CrUXを鵜呑みにしない)
- ⚠️ デスクトップの絶対値、とくにLCP——実測よりかなり楽観的に出る
- ⚠️ 「デスクトップがどれだけ悪いか」——遅い層を捉えきれず、Poor(悪い)を過小に見せる
- ⚠️ 月々の小さな変動——誤差やp75の丸めに埋もれる
- ⚠️ アクセス数の少ないサイト——そもそもデータが生成されず欠測しやすい
以下、なぜこう言えるのかを、突き合わせの実データで一つずつ示す。
検証(1)順位はよく当たる
ここから検証(3)までのグラフは、精度の高いCrUX API(直近28日のスナップショット・1ミリ秒精度)の数字を使い、Speed is Moneyの同じ28日と突き合わせている。
まず、CrUXとSpeed is MoneyのLCPを14サイト分プロットする。横軸・縦軸ともにLCPのp75(ミリ秒・小さいほど速い)で、横軸がCrUX、縦軸がSpeed is Moneyだ。破線は両者が完全一致する位置(y=x)を示す。

点は右肩上がりに並ぶ。速いサイトはCrUXと実測のどちらでも速く、遅いサイトも同様に遅い。順位の一致度を数値で見ると高く、LCPで順位相関0.96、INPで0.87、TTFBで0.93、FCPで0.96。「競合と比べてどちらが速いか」の相対評価に、CrUXは十分使える。
INP(こちらも横軸・縦軸ともにp75・ミリ秒)でも同じで、順位はよく当たる。

ただし、どちらの散布図も点は完全一致の線(破線)から外れている。LCPは線の上(実測のほうが遅い=中央値で27%遅い)、INPは線の下(CrUXのほうが大きめに出る)に寄る。順位は当たるのに、絶対値はズレる。 しかも指標で外れる向きが逆——これは単なる測定誤差ではなく、構造的な要因があることを示唆する。
検証(2)モバイルは一致しデスクトップはずれる
その答えはデバイスにある。軸は変わらずLCPのp75(ミリ秒)で、同じ点をモバイル(青丸)とデスクトップ(橙の三角)に塗り分けてプロットすると、二つの層がくっきり分かれる。

- デスクトップ(橙)は完全一致の線から上に外れる。 実測のほうが中央値で46%遅く、相関は r=0.640。前に見たとおり、CrUXはデスクトップでもChromeしか拾わず、Edge・Safariを含む約3分の1を計測していない。対象がブラウザの一部に限られる以上、ここにズレが出るのは想定の範囲だ。
- モバイル(青)は完全一致の線に乗る。 CrUXのモバイル値と実測の差は中央値で+1.6%、相関 r=0.985。14サイトすべてがほぼ線上に並ぶ。検証(1)で見た「全体で27%ズレる」のは、このデスクトップ側のズレが全体値に混ざったためだ。
ここで思い出したいのが、CrUXのモバイルはAndroid Chromeだけの数値であることだ。日本ではモバイルの過半数がiPhoneで、Android Chromeのサンプルは半数に満たない。それでもCrUXとSpeed is Moneyの実測でp75がここまで一致するなら、iPhoneとAndroidも近いスピード分布を持つ、と推測できる。
この仮説の検証は今後の研究に譲る。現時点でも、CrUXモバイルのp75は全体像に近く、実測の参考として使える可能性が高い。
検証(3)INPはデスクトップでも一致する
次に、INP(操作してから画面が反応するまでの速さ)も同じ軸で見る。散布図はINPのp75(ミリ秒)で、モバイル(青丸)とデスクトップ(橙三角)に分けている。

LCPでは外れたデスクトップ(橙)が、INPでは線の近くに収まる(r=0.925)。モバイル(r=0.964)と合わせ、INPはデバイスを問わず実測とそろう。モバイルで反応が遅めの領域(右上)ではCrUXがやや大きめに出るが、その差は小さい。
つまり——INPに関しては、CrUXはLCP以上に「全体の実態に近い」データを見せていると言ってよさそうだ。読み込みの速さ(LCP)はデスクトップの見えない層に引っ張られたが、操作の反応(INP)はそうした層の影響を受けにくく、Android Chromeだけを見ても全体の姿とほとんど変わらない。INPで「このサイトは反応がよい/悪い」を読むなら、デバイスを問わずCrUXを信じてよいだろう。
検証(4)月次アーカイブでもモバイルのLCPは誤差が小さい
ここまでの検証(1)〜(3)は、1ミリ秒精度のCrUX APIでの話だった。 だが実務で過去をさかのぼるとき見るのは、丸められた月次アーカイブ(BigQueryのdevice_summary)のほうだ。ここから検証(6)までは、このアーカイブの数字を使う。そこで、13か月×14サイト=182点をすべて打って、アーカイブが実測とどれだけ合うかを確かめた。まずは水準——LCPのp75(ミリ秒)——の散布図から。

APIのときと同じ構図だ。モバイルは完全一致の線に近い分布を描き、デスクトップにはやや大きなばらつきが見られる。過去の月をさかのぼっても、モバイルの速い/遅いは正しく読める。p75の系統差はSpeed is Moneyが約1割遅め(全ブラウザぶんの上振れ+丸めで速めに出るぶん)で、これは目安として織り込めばよい。
同じp75でも、INPはアーカイブだと緩くなる。

デスクトップ(橙)はINPが小さく(25〜75ms)低い位置に固まる。モバイル(青)は縦縞状に散らばっている。アーカイブのINP p75は25ミリ秒刻みに丸められるため、連続値の実測との間に階段状のズレが出る。相関もモバイルで r=0.83と、LCPの0.96より緩い。アーカイブのINP p75は水準の目安どまりと見ておきたい。「p75は丸めに弱い」というこの性質が、月々の変動をGood(良い)率で追うべき理由(検証6)でもある。
検証(5)割合で見てもモバイルは一致する
p75だけでなく、Good(良い)/Poor(悪い)の割合でも突き合わせる。
具体的な数値が得られるp75は意味を解釈しやすい反面、丸めのぶん若干精度に劣る。イメージしやすければ、Good(良い)率——その指標の「良い」基準を満たした割合——を追うほうが、より正確だ。
まず、182点それぞれ(CrUX=横軸、実測=縦軸)を散布図にする。点が完全一致の線に寄るほど、CrUXと実測は近い。LCPから見る。左にGood(良い)率、右にPoor(悪い)率を並べた(各軸=判定に入った割合%)。


モバイル(青)はどちらも完全一致の線に寄る(Good(良い)率の相関0.98、Poor(悪い)率0.95)。一方デスクトップ(橙)は線から外れる。CrUXがGood(良い)を約5ポイント多く、Poor(悪い)は約3ポイント少なく見せるためだ。デスクトップのLCPは「良く」見えやすい——水準の話と同じ癖だ。実務でひとつ覚えておくなら、これくらいでよい。
INPも同じ2枚で見る(左=Good(良い)率、右=Poor(悪い)率)。


Good(良い)率を見ると、デスクトップ(橙)は95%超に固まって線に近い。モバイル(青)は、とくにGood率が低めの左下で散らばりも見られるものの、おおむね線に沿う。相関はモバイル・デスクトップとも0.86前後だ。Poor(悪い)率は、どのサイトもほぼ0%に張り付く。点が集中するため相関係数は小さく出る。とはいえ「揃ってほぼ0%」という一致だ。CrUXで「INPが悪いサイトは少ない」と判断してよい。
最後に、指標ごとに数値でまとめる。device_summary と実測の Good(良い)率・Poor(悪い)率について、相関係数と両者の差(実測−CrUX・pt)を並べた。
| 指標 | 判定 | モバイル | デスクトップ | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 相関 r | 差(pt) | 相関 r | 差(pt) | ||
| LCP | Good(良い) | 0.98 | -1.5 | 0.89 | -4.9 |
| Poor(悪い) | 0.95 | +0.6 | 0.67 | +3.3 | |
| FCP | Good(良い) | 0.99 | -1.2 | 0.97 | -5.2 |
| Poor(悪い) | 0.99 | +0.2 | 0.93 | +2.8 | |
| TTFB | Good(良い) | 0.95 | +4.1 | 0.88 | -2.0 |
| Poor(悪い) | 0.97 | -0.9 | 0.91 | +0.7 | |
| INP | Good(良い) | 0.86 | -1.2 | 0.86 | -1.4 |
| Poor(悪い) | 0.56 | +0.8 | 0.59 | +0.6 | |
モバイルはどの指標もGood(良い)率の相関が高く、差も数pt以内におさまる。一方デスクトップはGood(良い)の差が開きやすい(LCPで-4.9pt、FCPで-5.2pt)。Poor(悪い)率も傾向は同じだ。INPのPoor(悪い)は相関こそ低い。ただし値がほぼ0%に固まるためで、不一致ではない。
検証(6)月次トレンドは方向を追えるが乖離も残る
引き続き月次アーカイブ(device_summary)で「経緯」を見る。ここで確かめたいのは、月ごとに上がった/下がったという変動が、どこまで実際のスピード変化を映すかだ。CrUXの履歴を見て「今月このサイトは速くなった(遅くなった)」と判断してよいものか。
実際に動きのあった4サイトについて、モバイルのLCP p75の月次推移を、実測(実線)とCrUX(破線)で重ねた。縦軸はLCPのp75(ミリ秒)、横軸は月だ。




方向はおおむね合っている。Site C・Kは2025年夏にLCPが1.5〜1.8秒台から3.4秒前後へ悪化した。実線と破線はそろって跳ね上がる。Site Jはほぼ横ばい。Site Nは改善だ。大きめの変化なら、CrUXの履歴でも向きは読める。 14サイトの月次連動は、サイト別相関の中央値0.74(14サイト中13が正)だった。
ただし、水準が一段ずれるサイトもある。改善したSite N(最後の図)がその例だ。実測とCrUXは同じ下降トレンドを描くものの、実測が一段高い位置にある。p75は100ミリ秒刻みに丸められるため、こうしたずれが出やすい。
同じ4サイトを、今度はGood(良い)率(Good(良い)判定の割合・%)で見る。




実線と破線が、p75よりもさらに密に重なる。Site C・Kの急落や、Site Nの改善を、実測とCrUXがほぼ同じ軌跡でなぞる。Good(良い)率は割合で出るぶん丸めに強く、月々の変化を素直に映す。
最後にPoor(悪い)率(%)を見る。




こちらは実測とCrUXの開きが目立つ。CrUXはPoor(悪い)を実測より小さめに見せ(Site C・Kで顕著)、値も小さいぶん揺れやすい。悪化の向きこそ捉えるが、水準を月次で細かく追うのは心もとない。
整理すると、月次で追うときの信頼性は Good(良い)率 > p75 > Poor(悪い)率 の順になる。月々の変動を追うなら、まず見るべきはGood(良い)率だ。 p75は直感的だが、丸めで一段ずれる。Poor(悪い)率は数字が小さく、揺れやすい。
それでも、追えるのは方向までだ。本物の変化かどうかの確証が要るなら、CrUXで見当をつけ、最後はRUMで実測したい。
まとめ:CrUXが使える範囲と注意点
最初の問いに戻ろう。「CrUXって、サイトスピードの意思決定に信用できるよね?」——答えは、用途を選べばイエスだ。
CrUXの守備範囲は狭い。日本で見ているのはデスクトップChrome(65%)とAndroid Chromeだけで、デスクトップのEdge・Safari・Firefox(約3分の1)も、iPhoneのSafari(モバイルの過半)も含まない。それでも、モバイルのLCPは14サイトすべてで実測とそろい、INPはデスクトップまで一致した。対象が限られていても、モバイルの水準はおおむね言い当てられていた。
だから、競合との順位、モバイルの水準と割合、INP、大きな変化の履歴は、全ブラウザのRUMと突き合わせても十分に信頼できる。裏を返せば、CrUXが実態からはっきりズレるのは、対象が構造的に狭いことに起因する一点——デスクトップの絶対値、とくにLCPの「どれだけ悪いか」——にほぼ絞られる。そこだけ割り引いて読めば、CrUXは「地図」として相当に正確だ。
CrUXを疑う必要はないし、盲信する必要もない。地図と実測の縮尺の違いを知って使い分ける。それが、フィールドデータと正しく付き合うということだと思う。
なお冒頭で断ったとおり、突き合わせに使ったSpeed is Money自身も全数ではなく標本で、対象は14サイトという小さなサンプルだ。ここで引いた線は「決定版」ではなく、あくまで一つの実測に基づく目安として受け取ってほしい。
全ブラウザで実測するには
冒頭で触れた「Speed is Money」は、サイトスピードに特化したシンプルな無料アクセス解析サービスだ。Safari・Edgeも含めた全ブラウザ・全訪問者の速度を取りこぼさず記録するので、CrUXでは見えないデスクトップの実態や、iPhoneユーザーの体験、実来訪の本当のデバイス構成まで把握できる。
この記事のデータも、Speed is Moneyを利用中の通販サイト14サイトに協力をいただいた。CrUXの数字だけで物足りなくなった方は、ぜひ実測を試してみてほしい。
なお、速度がCVRにどう効くのかについては、「通販サイトが遅いと損失はどのくらい?」でも機会損失の見える化として詳しく扱っている。あわせて読んでいただけると幸いだ。